Maybe Blue 第三部 誰かのために
花曇2
「集まったねー。今年も」
入学式も無事終わった新入生たちの部活見学期間が始まっていた。選手権には出れなかったものの、入部希望者だけで相変わらず百人近くいる。
「でもここからどれだけ残るのかね」
理香はそう言いながら、時々あの子かわいいとか、カッコイイとかチェックを入れている。萌子はグランドに視線を向けるマネージャー志望の女子生徒たちを見ていた。気付いた理香が、美都に言う。
「あの子たちも可哀想に。マネージャーは定員オーバーなのにね」
「今年は審査だけやるのよ」
萌子に言われて、理香も美都も驚いた。
「どうして？私たち、もういらないってこと？」
「そうじゃなくて。私たちが引退した後、マネージャーは必要でしょう？監督には、その候補を今から一応探しておくようにって言われたから」
「…そっか」
沈んだ声で理香がそう答えた。萌子も引退という言葉を使ったものの、現実感がない。
「引退って…選手権で負けたら、だよね」
美都がそう言う。つまり、どこまで勝ち残れるかで引退の日が決まるのだ。早ければ、夏。遅ければ、来年年明けまで。
「部員によっては、受験でインターハイまでって人もいると思う」
レギュラーの選手であれば、選手権までは引退しないだろう。だが、それ以外の部員の引退時期は、個人による。
厳己はきっと、夏までだろうな。
萌子はそう思いながら、グランドの片隅でそれでも楽しそうにボールを蹴る厳己を見つめた。家出するようにして凪高にやってきた厳己は、親との約束で浪人せずに大学に受からなければならない。しかも、実家の病院を継ぐために、医学部でなければ意味がないのだ。
他の皆はどうするんだろう。一馬に、篤志に…。
「萌子、危ないっ―」
突然悲鳴と同時に理香の叫び声が上がった。萌子が顔をはっと上げると、強く蹴られたボールが自分の方に飛んできていた。突然すぎて、動けずにいる萌子の 前に黒い影がさっと過る。思わずギュッと目を閉じた萌子だが、ボールがぶつかる気配はなく、こわごわと目を開けると、目の前に誰かの背中が見えた。その足 元には、サッカーボールがきちんと収まっている。
「大丈夫か。萌子」
振り返りもせず右京がそう言った。萌子に向って飛んできていたボールを、右京が寸前のところでトラップしたのだ。
「あ…うん」
「ぼーっとするな。邪魔だ」
「あ…ごめん」
右京は淡々とそう言うと、ボールをすぐさまグランドに蹴り返し、自身も走って練習に戻って行った。
「大丈夫萌子？あーびっくりした」
「怪我はない？」
入れ違うようにして理香と美都が萌子に駆け寄る。
すると急に、グランドを囲むようにして練習を見ていたマネージャー希望者たちが黄色い声援を上げ始めた。
「今の誰？かっこいい！」
「三年の藤原先輩。知らないの？」
それを横目で見ながら理香が呟く。
「あの子たち、全員不合格」
練習も終わりに近づいてくると、流石にマネージャー希望の子はほとんどいなくなった。
「やっぱり監督が認めるような女の子のマネージャーはいないってことかな」
着替えながら理香がそう言って深いため息をついたので、思わず萌子は尋ねた。
「理香ってば、そんなに女の子のマネージャーがほしいの？さっきはいらないって言いたそうだったけど」
「そうじゃなくて。…最近、アッチに避けられてる気がするんだよね」
「篤志が？」
このところの教室での様子を思い出して美都が答える。
「別に理香に対してじゃないと思うけど。この頃の日比野君、なんだかおかしいもの」
「そ、かな」
萌子は半分冗談めかして答えた。
「倦怠期なんじゃないの？長い春の」
「かな？」
わざと明るくそう答えてみたけれど、そうではない気がして理香はため息をついた。その隣で美都も呟く。
「…あたしも、理香と一緒かも。何だかこの頃、和美君が冷たいの」
「それはもとから」
鋭く言った理香に、萌子は軽く窘めるような視線を送ると、美都に向って元気づけるように言った。
「美都たちももう三年目になるんでしょう？」
ふうとため息をついた美都を見て、理香が言う。
「そういうことじゃ、萌子が一番幸せだよね」
「つきあい始めて一か月なんて、楽しい時期だもんね」
ボタンを止めていた萌子の手が思わず止まる。同じような会話を春休み前にも言われたような気がした。だがあの時とは違う気持ちで、萌子は何も答えずにボタンを止めた。
「成くん、一年生から人気あるらしいよ〜」
理香にそう言われた萌子は、思わずぶっきらぼうに答える。
「それは私に関係ないし」
「浮気の心配もないってこと？いいなあ萌子は、ラブラブで」
そんなことないと言い返そうとした萌子だが、ドアがノックされ、外から成の声が聞こえてきた。
「萌子、着替え終わった？」
途端に理香と美都が意味ありげに視線を送ってくる。
「うん。それじゃ、また明日」
萌子は鞄を取ると、二人に手を振って部屋を出て行った。
その帰り道、一緒にいるというのに、隣からこぼれてくる何度目かの欠伸に、耐えきれなくなって萌子は口を開いた。
「成、疲れてる？」
「ん？」
大きく伸びをして、成が萌子を見る。
「何度も欠伸してるし、元気ないから」
あげた両手を頭の後ろで組んでから、成は答えた。
「練習がきついからだよ」
そしてまた大きい欠伸をする。授業中もずっとこんな感じだったことを思い出し、萌子は思い切って切り出した。
「朝、別々に行こう。私も一人で行けるし、無理しなくていいから」
「無理なんかじゃないよ」
「そういうのがっ…。そういうのが、無理してるっていうのよ」
立ち止まった成と視線が交わる。萌子は傷つけないようにと慎重に言葉を選んだ。
「嫌じゃない。感謝してる。
でも、そうやって朝早起きすることで疲れるんだったら、いいから」
二人の脇を、車が通り抜けて行った。一瞬、ライトが成の顔を照らす。暗闇に映し出されたのは眉間にしわを寄せる成の表情だった。
『やっぱ辛いんじゃねぇの？萌子とクラスまで同じになって』
ケンの言葉が胸に痛い。
だからこそ、朝は別にと言ったのに、どうして成はこんなにも苦しそうな表情をするのだろうか。
成は…どうなりたいのだろうか、私と。
じっと見つめていると、小さいため息の後に、成は歩きながら答えた。
「…わかった」
夕食を食べ終えたケンは、恋人の亮子と一時間電話で話していたところで、二年生になった樹生から早く切るようにと催促された。初めは無視していたケンだったけれど、横に立たれて、会話も筒抜け、となると流石に居心地が悪くなり、
「じゃあな。亮子。俺のこと忘れんじゃねぇよ、ハハッ。じゃまた明日！」
と電話を切った。すると途端に樹生が受話器をケンから奪い取る。
「何だよ、ミッキー。女にでも電話するのか？」
「相変わらずうるさいっすね。用事が終わったら、さっさと風呂でも入って下さい。新入生の奴らは、律儀に先輩たちが皆風呂から出るまで入れないんだからさ。
それから、先輩とはいえ、立ち聞きしたら許さなねぇからっ」
だったらお前は何なんだ、おまけに先輩には敬語を使えと言い返したい気持ちを飲み込み、ケンは言われた通り風呂に入ろうと着替えを取りに自分の部屋に上がろうとした。
今年も新入生のうち、四人が寮生として新たに加わった。四人とも石橋がスカウトしてきた選手たちで、実力もそれなりにある。
うかうかしてられねぇな。三年だからって。
それに、今年は最後の年だ。
コーチが三年生だけに、これからの試合はすべてトーナメント戦だと思えと言っていたことをケンは思い出した。
負けたら終わりだ、そのくらいの気持ちでいけ、とそういうことだとケンは理解している。
自分の部屋に入ろうとしたところで、入れ替わるように成が廊下に出てきた。
「おまえ風呂？」
「いや。もう入った」
「そっか」
どこか背中を丸めて、とぼとぼと歩く後姿に、ケンはため息をつく。
この前部室で、成がやつれていると言ったのは冗談ではない。
バカがつくくらい素直で、まっすぐだったはずの成が、口数も少なくなり、笑顔も減った。萌子のせいだとは思いたくはないけれど、ケンが考えるところでそれ以外思い当たらない。
「なぁ成。恋愛の悩みなら、俺に聞けよな。
こう見えて、亮子とはもう四年以上の付き合いだぜ。アドバイスくらいしてやるよ」
冗談めいて言ったのは、成が笑えばいいなと思ったからだった。けれど成は、ケンの声を聞くと、立ち止まり振り返って、真剣な表情を向けてきた。
「…だったら、相談したいことがあるんだけど」
次の日の朝、約束した通り、成は萌子の家には来なかった。
自分でお願いしたというのに、萌子は家のドアを開ける瞬間、ほんの少し成がいてくれるのではという淡い期待を抱いていた。
馬鹿だな、と朝の道を歩きながら萌子は思った。
成の性格だったら、ああいうふうに私が言えば、素直に私の言葉を受け取るなんてこと、わかってたはずなのに。
それなのに、それでも待っていてほしかった、そう考える自分が浅ましいと萌子は思った。
でもそうでもしないと、成の気持ちが量れないと思った。
自分が断ったことを、それでもやらずにはいられないような強い想い。成のそういう想いを、萌子は感じ取りたかったのだ。
一人寂しく学校へと向かうと、朝のグランドには、朝練に参加することになった一年生たちがランニングをしている。
成は来ているかと視線をグランドに向けていると、後ろから元気に声をかけられた。
「はよっ、萌子」
「ケン。おはよう。…珍しいね。ケンが早くに朝練来るなんて」
「人聞きの悪いこと言うなよ。最上級生としての見本を新入生には見せねぇとな」
ケンはそう言うと、まじまじと萌子を見つめる。
「何？何か、ついてる？」
思わずそう聞くと、ケンは首を振りながら、
「いや、お前さ。…何でもない」
と答え、グランドに向かって行った。
それから、十五分ほどが過ぎ、部員が揃った中で、萌子の待ち人はなかなか姿を現さなかった。
「おはよう萌子」
息を切らせた声がして、振り返ると成が立っている。大勢いるグランドからは、ケンと篤志の冷やかしの声が聞こえてきた。
「何朝寝坊してるのかなぁ、早坂君」
「いちゃついてないで、早く練習始めろよ」
成は顔を赤らめて呟いた。
「お前らが、俺だけ起こさなかったんだろうっ！目覚まし時計まで止めてっ」
だがケンたちは、変わらずニヤニヤと笑っている。そんな二人を睨みつけている成に、萌子は冷静な声で言った。
「監督、怒り気味よ。早く練習した方がいいわ」
石橋の名前を聞いて、成は慌ててグランドに入って行こうとしたところで、ふと足を止めた。
「あ、そうだ。今度の日曜なんだけどさ…萌子の家に行ってもいい？」
突然の話に萌子は驚く。
今度の日曜は、前日の関東大会の県予選の準決勝で、勝ち残っていれば午前中のみの軽い練習になるはずだった。
「別に、いいけど。でも、何で？」
聞き返されて、成は言葉を詰まらせる。唸り声をあげてから、ぎこちない笑みで答えた。
「いや…。その。勉強でも…しようかな、って」
そういうと、それじゃあとだけ言い残して成はグランドへと駆け出して行った。残された萌子は、首を傾げ、勉強…と呟いた。
「おはよ。萌子。ね、古文の宿題やってきた？」
朝練も終わり、萌子が教室の席に着いた途端、後ろの席の祥子が話しかけてきた。
「一応はね。でも、わからないところがあって。ね、祥子ここわかる？」
ノートを祥子に渡し、教科書を広げながら指さしたところを祥子が説明する。その顔を見ながら、萌子は不思議な感覚を覚えていた。
始業式に話しかけられたことがきっかけとなり、席の近さもあって、萌子は祥子と急速に仲良くなっていった。周囲は当然驚いていたが、その仲は親友と言えるほどだ。ただ、二人の間で朔哉についての会話は一切ない。もちろん、恋人といって匂わすのも嫌で、なぜか二人の中で恋愛の話はご法度のようになってい た。一方、祥子は萌子と仲良くなるにつれ、他のサッカー部員とも仲良くなっていった。
「祥子、この前言ってたCD貸してくれ」
ふいに知朗がやってきて、そう言いながらも祥子の手から萌子のノートを奪う。
「すっげ。全部訳してあんじゃん。萌子、サンキュ」
「あのね、知朗―」
ノートを取り返そうとして伸びた萌子の手より先に、祥子の手が知朗からノートを取り返す。
「残念でした。これは、私が先なの」
そしてその代りとでも言うように、祥子はCDを知朗に渡す。
「チェッ、何だよ」
「いいでしょう？CDあるんだから」
「あー、じゃー俺祥子の次予約」
「何だよケン、横入りすんなよ」
「うるさいこと言うなよ、知朗。順番から言って、俺今日当たるんだよ」
「俺だってそうだ！」
にらみあうケンと知朗を前に萌子が頭を抱えていると、そこに、成が湊を伴って教室に入ってくる。萌子は手を上げようとしたが、
「あ、おはよう。成くん」
と先に祥子に言われてしまい、そっと手を引っ込める。通りかかった成に、祥子は何やら紙袋を渡した。
「ありがと」
「ああ。もっとゆっくりでよかったのに」
萌子の前で二人はにこやかな笑顔を見せあっている。萌子は何だか胸がざわつき、思わず口に出していた。
「何？それ」
受け取った成が答える。
「ああ。リバー・ランズ・スルー・イット。祥子がブラッド・ピット好きだって言うからさ」
「成くんが持ってるっていうから、借りちゃったの。よかったよ、ブラピ」
そう、と答えるものの、萌子の胸の中はどうしてか釈然としない。女の子とあまり仲のよくない成が、こんなにも親しげに、楽しそうに話しているからだ。特に最近萌子の前では笑わないというのに。
「どうかした？萌子」
俯いていると目の前で祥子が心配そうな顔で萌子を見つめている。
それを見て、萌子は自分は何を心配しているんだろうと思い直した。
祥子には朔哉さんがいる。それは成だって知っていることなのだ。
何でもないと答えると、ちょうどその時チャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた。
「春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山ぎは―」
教師が読み上げる枕草子をバックミュージックにして、萌子は窓の外を眺める。少し遠いが、萌子たちの教室からは微かに海が見える。
よく学校を抜け出したな、と萌子はふいに去年のことを思い出す。朔哉は天気がよく、風も穏やかな日になると、萌子の教室にやってきては海へと誘った。
萌子が悩むと朔哉はよく言った。
『チョークと教師の話をバックミュージックに睡眠時間を取るよりも、波の音を聞いてただ海を見つめているだけの方が、絶対に有意義な時間の過ごし方だと俺は思うよ』
そして、結局は二人して海辺にいるのだ。
「それじゃ、ここの訳を友近君」
教師に当てられ、知朗がさっき必死に書きこんだ訳をしどろもどろに読む。その後ろではケンが必死に萌子のノートを書き写している。萌子はそんな二人を横目で見ながら、ノートの下に隠しておいた便箋に文字を綴る。
『拝啓 福山朔哉様』
朔哉のことを思い出した時、どうしても気持ちが収まらなくなった時、こうして朔哉宛の手紙を書くことが、いつの間にか萌子の習慣になっていた。
何でもいい、本当にちょっとしたことでも、どんなに短い言葉でも、自分の気持ちを文字にすることで、萌子は朔哉に会いたいという衝動から逃れていた。
住所を知らないことで出せない手紙だからと余計に素直な気持ちを綴らせる。
萌子も、本当に住所を知りたければ、いくらでも方法はあることはわかっていた。だが知ってしまえば、会いに行きそうな自分がいたし、それは、成に対する 裏切りになってしまう。そんな気持ちからも、聞けずにいた。だが、会いたいという気持ちは収まらず、気付けば書き貯めた朔哉への手紙は、何通にも増えてい た。
週末の関東大会の神奈川県予選、準決勝。
凪浜は無事勝利することができた。圧勝とは行かなかったが、凪高が抱える問題がはっきりと表面に出てきた試合内容になった。
まずは、攻撃陣。
フォワードの知朗と樹生は、スピード重視の似たタイプということが露呈した試合になった。一人では交わせるが、二人つけば流石に厳しく、おまけに二人とも背が高くないので、空中戦はどうしても弱くなる。
中盤は、トップ下に和美、その下にゲームメーカーの右京、左右に二年の植松、由太という配置だが、植松が上がりやすい癖がある反面、試合が押されていると由太が下がり気味で、ラインがなかなか一定にならない。
そしてバックとなる成、ケン、湊、松本のゾーンディフェンスだが、時にケンや松本が相手の選手に引きずられてしまい、ゾーンが壊れて、そこを攻め込まれ るというケースが何度もあった。おまけに中盤が一定とならないことと重なると、最終ラインは崩れ、簡単にオフサイドの裏にボールを蹴られてしまう。
今日も何度もピンチになる場面があったのだ。
萌子も、今の凪浜が最高潮とは思わないが、どうも新しいフォーメーションに戸惑っていることは否めなかった。
控室を出て、集合場所の門のあたりに立っていた萌子の隣に、理香がやってきて
「聞いた？萌子。決勝の相手、川城だって」
「やっぱり」
思わず萌子はそう答えた。
絶不調の凪浜とは対照的に、川城は絶好調なのだ。中心選手の一人、塚本の怪我も回復して、スタメン出場していることも大きいのかもしれない。
「今川君、二点決めたらしいよ。流石っ」
「理香ってばどっちの味方なのよ」
興奮してそう言う理香に、ぷっと噴き出して思わず萌子が問いかける。理香は心外だとでも言うように頬を膨らませて答えた。
「そんなのもちろん凪高に決まってるでしょう！今川君は、個人的に応援してるだけよ」
その答えを聞いて、やってきたケンが声を上げる。
「個人的でも何でも、ライバル校のキャプテンが好きだなんて、はぁー、篤志は一体どんな教育してるんだか」
「何だよ、ケン」
その隣で篤志がじろりとケンを睨む。ケンはわざとらしくため息をついて答えた。
「だってそうだろ？もしも理香が今川にこっち側の情報流してたらどうすんだよ」
「そんなことするわけないじゃん」
ムキになってそう言った理香に、ケンも同じように答える。今日の試合内容のまずさに、ケンも苛立っているのだ。
「わかんねぇだろ？お前は気づかなくても、今川の方が誘導尋問してるかもしんねぇし」
「今川君はそんな人じゃないわ」
「そうよそうよ！」
思わず萌子が口を挟むと、理香もそう続いた。
「んだよ、萌子まで」
分が悪いと思ったのか、ケンは素直に認めた。
「わかったよ。
けどさ、…萌子。あんまり今川と仲良くするなよ」
「どういう意味？」
萌子の返事に、ケンは小さくため息をついて答えた。
「そりゃもちろん嫉妬する奴がいるからだろう。
何よりライバル校のキャプテンなんだぜ。そこんとこ、忘れんなよ」