Maybe Blue 第二部 凪より愛をこめて
冬燈6
その日の練習は、朔哉たちＯＢも参加できる日であった。
とはいえ、中心になるのは現役の部員たちで、練習時間も短い。
軽く汗を流す程度で、グランドを引き上げることになった朔哉は、ベンチに一人で座って書き物をしている萌子を見つけ、近づいた。
「萌子」
考え事をしていたのか、誰が自分を呼んでいたのかわからなかったらしい。
顔をあげ、呼びかけた相手を探す。朔哉を見つけた萌子の笑顔が僅かにこわばったのを、朔哉は見逃さなかった。
そろそろ本当のことを話さないといけないな。
美都から萌子が誤解している話を聞いてから、萌子は朔哉との会話を避けているのは、朔哉自身も気づいていることだった。
即答しないと言うことは、それだけ萌子が真剣に考えているからで、朔哉自身も萌子の出す答えを聞いてみたい、そういう思いから敢えて何も説明せずにいたのだが、こう露骨にされては、朔哉としても困るし、何より一緒にいれないことは寂しい。
ただでさえ、最近の萌子は部内の不穏な空気を払拭することばかり考えていて、朔哉の立ち入る隙もあまりないのだ。
萌子はじっと見つめる朔哉の前で、慌てて立ち上がると、その胸に書きこんでいた部誌を握りしめている。
ふぅと小さく息を吐くと、朔哉はなるべくさらりと言った。
「練習終わるの待ってるからさ、今日は一緒に帰らないか？
最近、ゆっくり話できてないし」
話したいことも、あるし。
そう続けようとしたところで、萌子がその声を遮って口を開いた。
「あ…の。
ごめんなさい、今日は理香と美都と約束があって」
朔哉から理香たちに頼めば、彼女たちはすぐさま萌子との約束をキャンセルしてくれるに違いない。
だが、それでは萌子が二人に対してすまない気持ちを抱えることになるし、それほど急いでいるわけでもない。
朔哉はそう思って続ける。
「それじゃ、夜は？
おばさんたち、今日も遅いんだろう？
またランニングの帰りにでも―」
そう言った朔哉の言葉を、萌子はまたも遮った。
「…ごめんなさい。
今日はお母さん、早く帰ってきてくれるの。
間に合えば、お父さんも一緒に」
家族三人での夕食。
そこに誘われない自分に、少し疎外感を感じながらも朔哉は答える。
「そう、か」
「ごめんなさい」
「いや、いいよ。
それじゃ、また」
朔哉はそう言うと、グランドを出て行こうと歩き始めた。
沢木家によく顔を出すようになっていたからかもしれないが、まるで朔哉は自分がその一員になったような気がしていたのだ。
…まあまだ、気が早い、か。
それにしても、萌子の態度は思った以上に頑なだ。
…悠長なこと言ってられないかも。
夜にでも電話しよう。
そう言おうと思って振り返った朔哉だが、いるはずのベンチに萌子の姿はない。
「…萌子？」
グランドにこぼれた朔哉の声を、乾いた冷たい風が吹き消していった。
「成、待って」
短い休憩時間に、水を一口飲み、グランドへと戻ろうとしたところで、成はそう声をかけられた。
顔をあげると、息を切らせた萌子が、目の前に立っていた。
「ああ、萌子。どうかした？」
「成に、言いたいことがあって」
萌子は大きく肩を上下させながら、深呼吸をしている。
表情もどこか強張っている。
その雰囲気に、成はどこか身構えた。
言いたいことって…、嫌な話じゃないよ、な。
ごくり、と唾を飲み込む成に、萌子はふっと表情を緩めて言う。
「ありがとう」
「え？」
「話したの。お母さんに。
そうしたら、わかったって。
今日、肉じゃが作ってくれるって。
お父さんも、今日はできるだけ早く帰ってくるって」
そう言ってにっこりとほほ笑む萌子を見て、成からも緊張感が抜けた。
「そっか」
小さく頷く萌子を見て、成も思わず笑みをこぼす。
あのね、と萌子は言葉を続けた。
「本当ありがとう。あの時成が言ってくれなかったら―」
だがその時、グランドの方から興仁の明るい声が聞こえてきた。
「なあ、由太。
俺と勝負しないか？」
ボールを手に持っている興仁の前には、由太が立っている。
「勝負？」
怪訝そうな表情で、由太は興仁を見つめた。
「ＰＫ。５本勝負」
ボールを持たない手の指を、大きく広げると、興仁は大きく頷きながら言った。
「お前が勝ったら、俺はお前の言うとおりに従う。
皆に鞭うってでもランニングさせろと言われればそうする。
副キャプテンを辞めろと言われたら、やめる。
だけど、俺が勝ったら、お前は俺の言うとおりに従う。
どうだ？」
思わず萌子は隣の成と顔を見合わせた。
興仁の言う、いい考えとは、こういうことだったのだ。
今日は石橋もコーチも、会議や所要があるということで、早めの時間にグランドを引き上げており、グランドに今いるのは部員だけだった。
練習のメニューは言い渡されているものの、実際の監視役はいない。
それにしても、負けたら副キャプテン辞めるだなんて、興仁ってば、そこまでしなくてもいいのに。
萌子は止めに入ろうと足を進めようとしたが、その時誰かが腕を引っ張った。
「…成」
「とにかく、興仁に任せてみよう。あいつがやるって言ったんだからさ」
萌子は成の顔を見ていたが、諦めたように小さくため息をついた。
萌子たち部員たちの目が集まっている中で、由太は小さく息を吐くと、くるりと興仁に背を向けた。
「…くだらないことやってる時間はない―」
「自信ないんだな。
いろいろ大口叩く割には」
興仁の言葉に、思わず足を止めた由太の背中がぴくりと動く。
由太が再び興仁の方に向き直ると、コロコロと足元にボールが転がってきた。由太がそのボールを捉えるのを見て、興仁は顔をくしゃくしゃにして笑って言う。
「やろうぜ」
グランドには、由太と興仁しかいなかった。
他の部員たちはグランドの外で、固唾をのんで見守っている。
「大丈夫なのかよ、興仁は」
「任せろ、とは言ってたけど」
「そりゃあいつの身体能力の高さは認めるけどさ、由太だって二年からAチーム入りしてるわけだし、実力がないわけじゃない」
「それにＰＫってもともとキッカーの方が有利だし」
「ってことは、結局状況変わらず？」
「というより、むしろ悪化。由太の独裁政権成立だな」
「まじかよ」
部員たちの声を耳にしながら、萌子はじっと対峙する二人を見つめていた。
由太はペナルティーマークにボールを合わせると、無言のままでじっとゴールを見つめた。
興仁は、というと、両手を叩き、大きく広げ、
「いつでもいいぞっ」
と叫んでいる。
由太は腰に手をあてると、数歩ボールから離れた。
そして小さく息を吐くと、ボールを蹴り上げる。
興仁がゴール右に向かって飛んだものの、ボールはさらにその上を飛び、僅かな弧を描いてサイドネットを揺らした。
由太が１ゴール。
５本勝負であるならば、由太が３本決めたら勝ちだ。
ふぅと息を吐く由太の表情が少し和らぐ。
「…あれって、取れないだろう。普通」
「ああ、いいコースだよな」
感嘆のため息が部員たちからこぼれた。
伊達に中学の頃からキャプテンをしていたわけではない。
目立つプレーはしないものの、確実に得点を取りたいとき、由太はチームでも重要なポジションを担っていた。
ゴール前では、立ち上がった興仁が、ボールを由太に蹴り返しながら、相変わらずの笑顔で大声を出している。
「まだまだ、勝負はあと二回はある。
さあ、次っ。
来いっっ」
その様子を見ると、由太は深くため息をついた。
二本目。
静まり返った中で、由太がボールを蹴る。
興仁は今度はすぐには動かなかったが、少し遅れて右へと飛んだ。
あと五センチでボールに手が届く、というところでボールは興仁の手をすり抜けると、クロスバーにぶつかる。
「あ」
バーがボールを弾くのか、
それともゴールに吸い寄せられるのか。
しかし落胆の声をともに、ボールはゴールネットを揺らした。
「ちぇー、おっしぃなあ」
由太の２ゴール。
あと１本入れれば、由太の勝利だ。
ボールを受け取りながら、ほっと安堵のため息をついた由太に、興仁は変わらない笑顔と大声を向ける。
「ラッキーだったな。
本当はど真ん中に入れるつもりだったのに、右に浮いちゃって」
由太の足元から、コロコロとボールが離れた。
どきりとして由太が顔をあげると、興仁は余裕の笑みを浮かべて言う。
「まだまだ。
あと一回ある。
さあ来い！」
実のところ、興仁の言う通りだった。
一本目、思い描いていたところに入れられたことで、集中力が少し切れたようだ。
左右に飛ぶ興仁の裏を突いてど真ん中に入る予定が、ボールに癖が出て右に切れた。
バーに当たってゴールしたのは、単に運がいいとしか言いようがない。
その気持ちを見透かしたような興仁に、由太は驚き、焦った。
動揺したからなのか、次のボールは、大きく枠外に外れてしまう。
あと一本、一本決めれば勝負はつく。
もともと、ＰＫなんて言うのは、こっちに有利になっている。
落ち着け。
次はどっちに蹴る？
右か？左か？
得意なのは右だ。
実際決めたのは、すべて右。
…だけど。
ゴール前で大きく手を広げ、笑顔を見せている興仁をちらりと見ると、そんな由太の考えすら読まれているような気がしてしまう。
…いや、左だ。
由太はそう心に決めて、ボールを蹴る。
しかし、蹴った瞬間、由太は興仁が左に飛ぶのがわかった。
迷いが伝わったのか、ボールの威力はない。
「あ」
と、自分の口から小さく息がこぼれた。
三本目の動揺を由太はそのまま引きずった。四本目、由太の蹴ったボールは、見事に興仁がパンチングがはじき返す。
「おしっ」
興仁がガッツポーズを見せた。
二対二。
有利に進めていたはずなのに、由太は興仁に並ばれてしまった。
「意外とやるじゃん。興仁」
グランドの外では、二人の様子を眺めていたケンがそう言った。
隣の理香も大はしゃぎしながら答える。
「ほんと、今日はついてるね。運がいい。
がんばれ、かっつん！」
声を張り上げる理香の隣で、腕組みをした篤志が珍しくぽつりと呟いた。
「違うよ、別に運がいいってわけじゃない」
「どういうこと？篤志」
思わず萌子がそう尋ねると、篤志は組んでいた腕を外しながら説明した。
「前に興仁が言ってたんだ。
チームが強くなれば強くなるほど、キーパーの存在感はなくなってくるって」
「え？」
どういうこと？という理香の視線に答えるように、篤志は説明を続ける。
「つまりさ、チームが強いってことは、攻めてる時間も長くなるだろ。つまり、敵陣での試合になる。
当然、こっちのキーパーのところにボールがやってくることはない。
下手すりゃボール触らないで試合が終わることだってある。
そんな試合ばっかりやってたら、実戦経験が少なくなるだろう？
実戦が少ないってことは、上達する機会が少ないってことになる。
だからさ、その分興仁は、よく観察することにしたって」
「観察？」
「選手の癖だよ。相手のチームもだけど、うちのチームも。
興仁は由太の癖が、わかってるから止められるんだ。勘じゃなくて」
「へぇ。すごいじゃん。かっつん」
ふーんと理香が感心したように言う。
「だからさ、理香が嘘つくとき、鼻の穴が開くことも、あいつ知ってたよ」
「えっ、そっそんなことないって」
「ほら、今も開いてる」
篤志にそう指を差された理香は、慌てて鼻を隠した。
五本目のボールを蹴り終えた由太は、その場にそのまま立ち尽くした。
目の前では、ボールを手に持った興仁が、笑顔を向けて、自分の方に向って歩いてきている。
最後は自分の一番得意なコースで、と思って蹴ったボールは、見事に興仁の手で阻まれ、ゴールすることはできなかった。
二対三。
由太の負けだ。
唇をかみしめている由太の前で、興仁は口を開く。
「気づいてないだろ。自分の癖。
必ず蹴る前に、体がボールを蹴ろうとする方向に開くんだよ」
その視線に耐えきれず、目を伏せた由太にため息をつくと、
興仁はグランドの外から眺めていた部員たちに向かって言った。
「つーわけで、今日は紅白試合。Ｃチーム対Ｂチーム。Ａチームの連中は、審判頼む」
その瞬間、歓声が上がる。
Ａチームのメンバーは不服そうだが、それでも素直に準備を始めていた。
「それじゃ、Ｂチーム。集合！
フォーメーション決めるぞ」
「Ｃチームは赤いビブスだ。はい、篤志。これ配ってくれ」
和気藹々とした空気とともにグランドに部員たちの歓声と笑顔がこぼれる。
その様子を見て、由太はそっとグランドを出て行こうとした。
慌てて萌子が追いかけようとすると、
「あーちょっと待って、萌子」
と興仁が萌子を引き留める。
「興仁。だけど由太が―」
「その役目は、湊の役目だから」
予想外のことを言われて戸惑ったのは、萌子だけではなかった。
興仁にそう言われて肩をぽんと叩かれた湊も、驚いた表情で興仁を見つめる。
「どうして俺が―」
「だって俺が行っても、あいつ意地になって戻ってこないだろう。同情されたって思ってさ」
「それじゃ私が―」
「萌子も同じだよ。こういう時は、湊の出番なんだって」
「俺の？」
湊が不思議そうな顔をして、そう呟いた。
いつもの湊なら、その理由を問うことなく、わかったと由太を追いかけるだろう。いや、その前に、誰に言われることもなく、由太を追いかけている。
だがその湊がしり込みしている。
萌子は美都が言っていたことを思い出した。
『最近、元気ないし…』
何かあったの？
萌子が思わずそう尋ねようとする前に、興仁が湊の背中をバンッと叩くと、親指を突き立てて言った
「湊なら、嫌みなくできるじゃん」
確かに興仁の言う通りなのだろう。
だが、湊はなかなかわかったとは言わなかった。
「…でも」
「そういうキャラなんだよ。得するタイプ」
「タイプって―」
「だからぁ、俺が行っても、あいつは絶対に素直に聞かないだろ？」
「けど―」
二人のやり取りを見て、萌子は間に入ることにした。
「いいわ、湊。私が行くから―」
「やめとけって萌子」
心なしか興仁の声が強く聞こえる。
「どうして」
思わず萌子はそう尋ねた。
やはり結果がどうであれ、ああいう形で二人を対峙させるべきじゃなかった。
萌子はそう後悔していた。
一方が勝つと言うことは、一方が負けると言うことで、それは真実とは別のところで事の正否を決めてしまうことになりかねない。
この場合、興仁が正しくて、由太が間違っているというのではないのだ。
真剣な萌子の表情を見た興仁は、ニコッと笑って答えた。
「あーホラ、由太だって男なんだからさ、こういう時に女の子に優しくされてみろよ。
コロッていっちゃうかもしれないだろう」
思わずムッとして萌子は言い返す。
「冗談言わないで。
由太はそういうタイプじゃないわ」
睨みつけられた興仁は、笑顔をいくらか強張らせてそれでも答える。
「あー。そう、だよな。
ごめん、ごめん。
でも、女なんかに慰められたくないって意地はっちゃうタイプではあるだろ？」
そう言われると、萌子も言い返す言葉がなかった。
「俺は、きっとどんな人間にも、居場所はあるんだって思ってるから。
自分の役割ってのも、それと一緒であるんだと思う。
由太が部員を厳しくしてたのだって、それはあいつに割り当てられた役割だからであって、同じように、副キャプテンなんかに急に選ばれた俺にも、きっと役割はあるし、湊にも、萌子にも、同じようにあると思うんだ。
それで言うと、今行く役割なのは、湊しかいないと思う」
腰に手を当てて、ため息をついた萌子に、湊がわかったと告げた。
由太を見つけるのは簡単だった。
埠頭のところで、由太は座ることもせず、ただ立っていたのだ。
コンクリートには長い影ができている。
歩いて行くと、気付いた由太が僅かに視線を湊に投げる。だが、すぐに視線を海に戻すと、何事もなかったのように動かなくなってしまった。
気まずくなった湊は、思わず頭を下げた。
「ごめん」
だが由太の反応は何もなかった。
当然だと、湊も思う。
興仁は、人には誰しも役割があると言ってはいたけれど、湊は興仁が自分が適任だと言った意味がわからなかった。
役割、居場所。
個性派ばかりのサッカー部で、自分にもあったのだろうか。
「正直言って、今の俺。由太に何も言えるような言葉が見つからない。
偉そうなこと言えない」
そう言う意味では、由太は自分の役割を全うしようとしただけなのだ。
少しやり方が強引だっただけ。
だが一方の自分はどうなんだ、と湊は問いかける。
その役割すら、見つけられずにいる。
小さく息を吐くと、湊は思い切って口を開いた。
「この前言われたんだ、監督に。
俺のサッカーって何だって。
人に合わせることばかりで、自分がないってさ。
確かにそうなんだ。
俺ってどんな人間って、誰に聞いても皆がきっと答える。
優しい人だって。
だけど、それって他人のやりたいことに合わせてるってだけで、自分がない。
そう言われてるような気がした。
だいたい優しいって何に対してどうするから優しいっていうんだ？
お年寄りに席を譲ったり、
落し物を拾って交番に届けたり、
当然のことだろう？
俺、きっと優しくなんかないよ。
だって俺…こんなになるまで、由太が追い詰められるまで、何もできなかった。
気づいてたのに、自分勝手だな、ほんと」
すると、波の音に混ざって、由太が答えた。
「そんなことない。
当然のことができない奴なんて、たくさんいる。
俺は…素直に謝ることができない」
「由太―」
湊がそう言って顔を上げたが、相変わらず由太は振り返る気配すらなかった。
「先に戻れ、湊」
「でも―」
「俺も戻る。少し、頭冷やしてから、ちゃんと戻るから安心しろ」
今までにない諭すような言い方に、少し湊は戸惑った。
だが、由太がそう言っているのならば、今は一人にさせておいた方がいいと湊は思い、ゆっくりと学校に戻ろうとしたところで、由太がまるで独り言のように呟いた。
「誰かの上に立って、統率していくには、それなりの存在じゃないといけないと思ってたんだ。
命令する、何かを決める、そういう立場にある人間には、それなりの責任が伴うって。
その中で、だけど俺は、何かを忘れてたんだろうな」
「何か？」
「部員の心を思いやることだ。
自分のことに必死で、俺もお前がそんな風に悩んでいたなんて、全然気づいてなかった。
すまない」
謝ることが苦手な由太の言葉に、湊は慌てて言い返した。
「由太が謝ることないよ。これは、俺自身の問題なんだから」
「俺は、お前がいてくれて、助かっていた。
言葉が足りなくて、愛想の悪い俺の代わりに、部員を一つにまとめてくれてた。
サッカーだって、俺は別に個性がないとも思わない。
周りの空気に合わせられることだって、立派な個性じゃないか？」
そう言って夕日に顔を赤く染めた由太の横顔を、湊は黙って見つめていた。