その後、花岡えみるのシークレットコンサートは再開した。
　というのも、ファンのほとんどが、その後会場にまた戻って、えみるちゃんコールを始めたからだ。オレたちのあとを追いかけて、ようやくドリームワールドにやってきたマネージャーがその様子を見て、彼女が何か歌わないと収拾がつかないって判断したから。
　そう、あのスキャンダル記事は、ファンには関係なかったのだ。
　そうして無事に、花岡えみるは復活をした。
　で、オレは、というと。
　そのまま素直に葉月家に戻ってきたんだ。
「けど、どうして高未がいるわけ？」
「ひどいわね、その言い方。
　さっき榊から連絡があってね。
　重大な話があるから、集まってくれって言われたのよ。
　なのに、こっちに来たらみんなもぬけの殻なんだもん。紗那の携帯がつながってよかったぁ」
　おい紗那。
　オレが戦ってたとき、お前は携帯に出てたわけ？
「いいじゃないの。結果オーライでしょう？」
　そういう問題かよ。
「そういう問題よ」
　何か納得いかないけど、ま、いっか。
「相変わらず能天気だな、お前」
と神楽に言われたけど、その通りだ。
　すると電話が鳴って、一番近くにいた千寿が出る。
「はい。…僕です。どうしたんですか？」
　相変わらずの堅い口調。相手は親父だろう。
「え？いなくなった？」
　突然、千寿の口調が険しくなって、しばらく会話した後で、わかりました、と千寿が電話を切った。
「どうしたんだよ、親父、今度は泥棒にでもあったのか？」
「違う。
　…名倉先生が、いなくなったそうだ」
　え？いなくなった？
「パスポートもなくなってるっていうから、多分日本に帰国するつもりだろうって。まだ安定期じゃないらしいが」
「何のために？」
　紗那がそういう。
　親父と結婚するんだとしても、わざわざ日本に、戻ってくるなんて。
　子供を生むため？
　それとも？
　その時、ピンポーンというチャイムと同時に、榊と貴羽が姿を現した。
　そして、榊が叫んだ。
「みつかったぞっ」
　え？
「どこにいたんだ？あのバカ教師っ」
　おい、神楽。香苗先生はバカじゃないだろ。
「カナエ先生？」
「誰それ？」
　榊と高未が顔をあわせる。
　千寿が頭を抱えて言う。
「榊たちには関係ない、それよりいったい誰が見つかったって言うんだ」
　混乱してるオレたちの中で、一人冷静に貴羽が答えた。
「仲間よ。最後の天使」