今日は地元も夏祭りなの。

去年までは裕也とか由美と一緒に出掛けたんだけど
今年は去年までとは違って私にも“いい人”が出来たんです。

ふふふ。

裕也は由佳ちゃんを誘って行くらしいから
もしかしたら会えるかも知れない。
由美は亮さんとデートでお祭りには来ないみたいなの。

残念。



篤史さんはお仕事で定時に上がって
私を迎えに来てくれるというので
お風呂に入った後、浴衣など着ております。

高校の時に文化祭などで何度か着る機会があったので
浴衣くらいなら自分で着られるけれど・・
変じゃないかな？

お母さんはかわいいよって言ってくれるけど
きっと本心じゃないと思う。
頭の中は篤史さんに染まっているに違いない。

お母さんほど篤史さんファンはいないと思う。
だからお父さんも何も言えないし・・

ん？
違うかな？

お父さんも自分の子供扱いしちゃってる？
一緒に飲むお酒がおいしいと言ってたし・・・。
・・篤史さんも満更じゃないみたいだから・・いいか・・。



水色の浴衣地に色んな色のお花が散りばめられた浴衣は
由佳ちゃんとお揃いなの。

先週二人で買いに行ったんだ。

裕也も篤史さんも知らないだろうから楽しみだ。








ピンポーン


インターフォンがなると同時にお母さんが玄関に出ている。
う・・すごく素早い。

篤史さんに色々話しかけて楽しく笑ってる。
私も混ぜてよ！！


私が玄関を出ると篤史さんがにこやかに微笑んでいた。


わぁ・・かっこいい。


紺色のポロに白いパンツを履いているだけなのに
すごく大人っぽく見える。
（というか・・大人だもんね・・）


浴衣姿の私を見て
篤史さんは優しく微笑みながら言った。


「サツキは何を着ても似合うね。
すごくかわいいよ。」

きゃぁぁぁ。
うれしいよ〜?



まだ話しかけているお母さんに篤史さんは
「いってきます」というと

お母さんはやっと解放してくれた。


む。
今のところ一番のライバルはお母さんかも。








篤史さんと指を絡ませ歩く。

今まで何度も行った事のあるお祭りが別の行事にも思える。

優しく微笑みかけながら
私の足元を気にしながら
篤史さんはすごく優しくてかっこいい。

だって道行く人が振り返って見てるの。
私も思うんだけどやっぱり篤史さんってすごくかっこいいから
モテルんだろうな。


会社だって・・この前お店（私のバイト先）に来た人（彼の部下：女性）だって
すごく綺麗な人だったし・・


ズキン。


自分がお子ちゃまだから
篤史さん笑われてないかな？

『あんな子と付き合っているんだって』
とか変なレッテル貼られてたり・・・。


しょんぼり考えていると篤史さんが私を呼んだ。


「どうした？サツキ？」

ううん。なんでもない。
そう言おうとしたんだけど何故か言葉が出ない。
だから大きく横に首を振った。




私の前に影が出来て優しく抱きしめてくれた。

「俺がずっとそばにいるから・・
泣きたいなら腕の中ここで泣いたらいい。」

篤史さんの声が響いて聞こえる。
鼓動の音も重なって私はさらに落ち着いた。



篤史さんのおかげで落ち着いた私は
見上げてにっこり笑った。

そしたら彼もにっこりしてくれた。

「サツキ、何か食べる？」




周りをぐるっと見回した篤史さんが提案してくれた。

「あっ。りんご飴が食べたい。」



私が指差してそこに行こうとしたら
足が痛いことに気がついた。


あ・・・草履ですれちゃってた。

足元を見ている私に篤史さんも気がついたようで

「サツキはここにいてすぐ買ってくるから」

私は力強く頷くと篤史さんはダッシュで買いに行った。



・・・うーん。どうしよう。
巾着の近くに絆創膏を用意していたんだけど
忘れちゃってる。

近くのコンビニとかで売っているかな？




「あれ？サツキ？」

考えことをしていた、私に
見知った声が聞こえた。


「あれ？裕也？」

「お前こんなところに一人で何やってんだ？」

「篤史さんは私のりんご飴を買いに行ってくれて・・
私は・・・」

私は自分の足元に視線を落とした。
私のその視線を辿ったようで裕也は深く溜息をついた。

「お前は学習機能ねえな。
毎回それじゃ・・赤ちゃんと変わらないだろう？」


確かにそうだけど
裕也と何度か来たことがあるけど
同じようなことになってたけど・・
私が成長していない自分を一番知ってるのに！！


裕也は私の隣に座った。
彼を見上げて私は言う。

「由佳ちゃんは？」

裕也は指を指した先に、複数の女の子がいた。
由佳ちゃんの薄いピンク色の浴衣が見える。


「ほら・・そこ。同じ学校の子とばったり出会って
もう・・5分くら話し込んでいる。
お前が一人でぼけっとしているのに気づいてやって
わざわざ来てやったんだぞ？」


「ぼけっとって何よ。絆創膏ってコンビニで売ってたかな？
と考えてただけだもん。」


「サツキ？」


篤史さんが心配そうな顔をしている。

彼の方を見ると
篤史さんの顔色がかわったことに気がついた。


あ・・・裕也に気がついたのね。

本当に仲良くしてよ。


そうして私は篤史さんに買ってもらったりんご飴を手に
食べている。

由佳ちゃんから絆創膏を貰って
篤史さんが絆創膏を貼ってくれました。


楽しい友達と来る夏祭りより
大好きな人と来る夏祭りもいいなと思った今日この頃です。