宝物・「天気雨｣

天気雨＜＜＜＠「明日はきっといい天気」

　晴れたら、傘をたたんで、まぶしい青空の下で会いましょう。

　待ち合わせ場所は、どこ？
　ワタクシ、舘葉佳哉は、案の定迷子になってました。な～んて反省している場合ではないのに！

「どうして、この学校は無駄に広いのよ・・・・・」
　もう、泣きそう。私の心を映したかのように、外はどんより。結局、雨はやんだものの、灰色の雲は、今にも落ちてきそう。
　どこが、天気になるのよ・・・・・・。って自分で突っ込んでみたり。
「羽柴先輩も、どこが晴れるっていうのよ」
　ついつい今はいない人にあたってしまう。そうよね、羽柴先輩が迎えに来ないからいけないのよ。たかだか、半年の間に３回も学校内で迷子になってる下級生だって知ってるくせに・・・。
　一度歩いた道でもすぐに忘れちゃうのに・・・・いまだに友達がいないと特別教室に行けないし、帰れもしないのに。でも、先輩はそんなこと知らないよね。たまたま迷子になってた後輩を親切心で２回ほど目的地に連れてってくれただけだもの。だから、こんなところで迷子になってるなんて思いもしないはず。どうして、私って方向音痴なんだろ・・・・それも！極度の。
　でも、この特技（？）がなかったら、羽柴先輩にも会えなかった。良いことなのか悪いことなのかわからない。
　もうどうしようもなくなってきちゃった・・・・。ぺたんって廊下に座り込んで、泣きそうになってきちゃったよ・・・。誰でもいいから私を玄関まで連れてってください。

「どしたの？」
　しばらく呆然としてたら、天から声が！というわけではないんだけど、救いの声が聞こえた。
　私は思いっきり振り向いた。おかげで相手はものすごくびっくりしてたけど。
「すいません！あの・・・・・。管理棟渡り廊下ってどこですか？！」
　必死の形相だったと思う。相手の女の人は（たぶん先輩）は、苦笑しながら道案内をしてくれた。
「迷子なの？」
「・・・・そうなんです。どうしても、この学校の構図が頭に入らなくて・・・・・」
　恥ずかしくなって俯くと、先輩は、大爆笑。
「あぁ、無駄に広いもんね。ここって」
「そうですよね！」
「でも、迷子になった人には始めてあったわ」
　・・・・・・・・。やっぱり私だけなんだろうか・・・？そういえば、羽柴先輩も笑ってたような気がする。
「管理棟渡り廊下で誰かと待ち合わせ？」
「はっ、はい」
「そっか・・・・・。ふぅん。ちなみに管理棟渡り廊下って生徒会室前でもあるんだよね。生徒会の誰かと待ち合わせなの？」
　へぇ・・・。そんなところに生徒会室ってあったんだ。あっ、ほんと私ってどうしようもないくらいこの学校の部屋わかってない。だめじゃん。
「いいえ・・・・・」
　黙った私に、先輩は何も言わなかった。いまさら落ち込んでる私って・・・・・・。
　そんな無言の時間も長くは続かなかった。理由は簡単。目的地に着いたから。
　って・・・・・こんなに近かったんだ。どこで迷ってたのよ・・・私。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、私も生徒会室に用事があったからちょうど良かったのよ・・・・って・・・・・あれ？栄？」
　先輩が見つめたさきには、私がひたすら待たせてしまっていた羽柴先輩。えっ？栄って・・・？羽柴先輩の名前だよね・・・たしか。
「お～い！栄？」
　隣にいた先輩が声を上げて羽柴先輩を呼ぶ。先輩もこちらに気づいて、私に気づくと眼を見開いて私と隣の先輩を見た。
「なんで、瑞希が佳哉嬢といるんだよ・・・・」
「あれ？なんだ。この子の待ち人って栄のことなんだ・・・・ふぅん。へぇ？」
　意味ありげに私と羽柴先輩を・・瑞希先輩が見てた。なんだろ？変な空気。それに、羽柴先輩のことを名前で呼ぶ人なんて始めてみた。といっても・・・・私も羽柴先輩のこと良く知らないんだけど。
「瑞希には関係ないだろ？で？お前、恩田に用事があるんじゃないのか？」
「まっ、そういうことにしといてあげるわ？私も行を待たせるのは嫌だから」
　そういって、瑞希先輩は私に笑いかけて「じゃあね」と言った後、たぶん生徒会室に入って言った。その後、聞こえたのは、大爆笑。
「行！きいてよ！！」
「わかったから、落ち着きなよ。瑞希」
　聞いたことある声が瑞希先輩の声に返事してた。確か、生徒会長の声。
「ったく、瑞希のやつ・・・・」
　横では羽柴先輩が苦虫を噛み潰したかのような顔。なんだろ？ほんと。
　そのまま、私の手をとって歩き出した。もちろん、方向音痴の私はどこに連れて行かれるのかわかってません。ただ、手がとても熱く感じただけ。そして、びっくりしただけ。
「あの･･･手」
「ん？だって、迷子になったら困るだろ？」
　あっけらかんと言う先輩。確かにそのとおりなんだけど・・・先輩には２度も助けてもらってるし、さらにいえば、さっきも迷子になってたし！！
「なんで、佳哉嬢は、瑞希といたわけ？知り合い？」
「えっ？違います。あの・・・・・待ち合わせ場所がわからなくて、それで・・・・」
　言葉を濁した私に、眼を丸くした先輩は一瞬後噴出した。
「また、迷子？！」
　また・・・・て言わなくても。ちょっとひどい・・・・。

「佳哉嬢は俺がいないとだめだな～」
といったことは、落ち込んでた私の耳には入ってこなかった。
　

　連れて行かれたさきは、玄関。もう下校時刻をとっくに過ぎていて、玄関先にいるのは私と先輩だけ。
「さて？どこ行きたい？」
　そういって先輩の目線を追った先には、まぶしいほどの太陽。いつのまにか雲は切れて、きつい日差しが私たちを照らしていた。
「晴れてる・・・・・」
「だから言ったろ？絶対晴れるって？」
　なんか自信満々の先輩にちょっと笑った。
「どこでもいいですよ」
　私の言葉に先輩は困ったように笑ってた。

　ＥＮＤ・・・・・・・・？

　

ＩＮＳＯＭＮＩＡさんの企画に参加をいたしまして、そのお礼ということで、大好きな「客観的恋愛事情」の不幸な恋愛が似合う羽柴栄くんを、とリクエストさせていただきました。佳哉ちゃんかわいいです。こういう天然な子、大好きです。
　「客観的恋愛事情」にはいろんなキャラが出てくるのですが、私はこの栄くんと、行くんといういわばライバル（？）が大のお気に入りなんです。他にも今回出てくれている瑞希ちゃんをはじめ、素敵なキャラがたくさん出てきます。
　こんなわたしの我侭リクエストに答えてくださって、秋月さん本当にありがとうございました。

　なお、この作品の著作権は、作者である秋月知咲さんに帰属します。無断転用はご遠慮ください。

INSOMNIA[master:秋月知咲様]